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2007年09月29日
9月例会記録(1) 1/2
■田中 達也氏
「変体仮名を読む その2 鉄舟の書をもとに」
変体仮名について、なぜこの場でしゃべるというかと申しますと、学生のときに古典、特に近世文学について勉強していたからです。その時の薄れ行く知識を引っ張り出して、皆さんにお話できればと思います。
まずは、昨年2006年4月にも同じタイトルでお話しているのですが、そのときの内容をおさらいさせていただきます。
1.変体仮名とは 〜おさらい
変体仮名とは、ひらがなの一種です。現在使っているひらがなは、あ・い・う・え・お・・・という、いわゆる50音です。ひとつの「あ」という音に対してひとつの文字「あ」がセットになっている、これが私たちの習っているひらがなです。
ひらがなの成り立ちというのは、最初から現在のような1音=1字の50音だったわけではありません。
中国から漢字が輸入されて、それに日本語の音を無理矢理つけて使っていたのですが、それが次第に簡略化されてひらがなが生まれました。
ひらがなが生まれる過程で、現在の「あ」という仮名は、「安」という字を字母として作られました。しかし、元々「あ」という音を表現する文字は、今は「安→あ」と決まっているのですが、昔は仮名のもととなる「字母」が何種類か存在していたのです。「安」「阿」・・・など。これをこんにち、「変体仮名」と呼んでいます。
変体仮名は、約300文字くらいあります。昔の人はこれを使ってひらがなを表記していました。漢字が「変体仮名」に固まったのが西暦1000年前後ですので、今から1,000年くらい前になります。変体仮名はそれから約900年間使われてきました。
現在使っている「ひらがな」は、明治33年(1900年)、小学校令という法令により、整理統一され、1音=1字に決められました。
ちなみに、明治33年といいますと、鉄舟は亡くなっています。明治21年に亡くなっておられますので、私たちが現在使っているこの50音を知ることはなかったのです。鉄舟は変体仮名を使って文字を書いていたのです。
私たちが使っているひらがなは1900年制定ですので、まだ100年くらいの歴史しかありません。現在使っている50音のひらがなのほうが歴史は浅いのです。
以上が変体仮名の歴史です。
その変体仮名で古典は書かれておりますので、それを読み解くことが中世から近世にかけての書物の原本にあたるときの基本的な知識になります。
変体仮名に触れていただくために資料を用意いたしました。
2.変体仮名を読む
ウォーミングアップ代わりに簡単な変体仮名を読み解いていただこうと思います。「脳トレ」にもなりますよ。
<図1>
<図2>
『麻疹能毒養生弁』(はしかのうどくようじょうべん)
この資料は江戸の瓦版で、麻疹が流行したときに配られたものです。出版年の記述があります。「文久二年七月」に配られたものです。
ちなみに、文久二年(1862年)という年は、鉄舟27歳で、浪士隊の取締役になり、浪士を連れて京から江戸に移動したり、清河八郎とおつきあいしていた頃です。その頃麻疹が流行って、この瓦版が出たのです。
早速読んでいきたいと思います<図2>。
麻疹や能毒の良いものと、悪いものが番付してあります。大関・関脇・小結・前頭・・・というように並んでいます。ちなみに、当時は「横綱」という位はありませんでした。大関が最高位でした。
<図2>を右から呼んでみましょう。
■大関=くろまめ
■関脇=あづき
最初の文字が「あ」、最後の文字が「き」とわかります。「あずき」と想像することができますが、真ん中の文字は「ず」ではなく、字母が「徒」の「づ」です。
■小結=やへな(奈)り
緑豆だそうです。
■前頭=やきふ
■前頭=くわゐ
字母「王」の「わ」です。よく出てくるので覚えておかれると便利です。
■前頭=はすの根
「者」を字母とする「は」、「す」は「春」が字母です。
■前頭=にんじん
「じ」は「志」に濁点の「じ」、「いんげん豆」の「げ」は「介」に濁点です。■前頭=ながいも
■=つくいも
「あづき」と同じく、「徒」を字母とする「つ」です。
投稿者 staff : 2007年09月29日 12:59