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2007年04月06日

3月例会記録(2)

■山本紀久雄氏
「山岡静山との出会い・・・そのニ」

 われわれは明治以来、教育によって、頭の中を洗脳されたと思う。全国フォーラムで井上先生が紹介してくれた『逝きし世の面影』(渡辺京三氏著)を読むと、江戸時代は民主的で素晴らしい時代があった。日本人ではなく日本に来た外国からの著述を集めて実証した。客観的な評価から日本をあぶりだしてきた。明治の日本人は外国人にコンプレックスがなかった。現在コンプレックスがあるとしたら、それ以後の結果である。
 今に続く面白いことが出ており、ニコライ(ニコライ堂を作った人)が、日本人は非常に恵まれた状態なのに政府に文句を言う、そして言い分が口にできるというのが民主的であると言っている。江戸時代から政府に文句が言えた。封建的に抑えられていなかった。日本はそういう人種。

1.鉄舟の生き方から学ぶこと、それは生きるためのセオリー

 朝日新聞2月27日版に茨城大学助教授磯田道史さんが鉄舟の貧乏について書いている。貧乏は極に達した。山岡の家には柏の大木があった。あるとき柏餅屋が来て葉を売ってくれといった。奥さんは、売ることは武士だからできない。ただ餅に変えてもらって、子供に食べさせた。鉄舟が帰ってきて、奥さんが柏の葉を餅に変えたことを言うと、柏の大木を伐ってしまった。徹底的に山岡鉄舟は武士道を極めた。
 出典を磯田さんにお聞きしないとならないが、これはあることを示していると思う。我々はお金ないときはどうしますか?お金がないから、仕事をする。昔の武士たちでも武芸に励むのは立身出世のためで、立身すればお金が入ってくる。目的と方法があって、目的をお金にすると、方法は剣の腕を磨いて出世することになる。
 来年柏の葉が出れば餅になったのに、鉄舟は伐った。鉄舟の目的はお金ではない。お金がすぐに簡単にほしい、という人がいた。金は何かをするために必要なものでしょう。お金が目的だったら、お金を手にしたら死んでしまう。何のためのお金でしょうか。
 鉄舟の目的は何だったのでしょうか。鉄舟の目的が金だったら、柏の木を伐らないでしょう。お金がなかったら働いて、お金を握ったら、その先にある、目的に向かう。目標を明確にしたい。ここがぶれると方法論が狂ってしまう。

 ある会社に行ったら、ちょうど新入社員の入社式をしていた。社長は新入社員に目標を持ってやってほしいといった。
 目標はロマンだ、戦略だという人がたくさんいる。目標は簡単に持てる。目標を簡単に持つと簡単になくなる。挫折する。目的は簡単にできる。あまりにも大きい目的を持ちすぎると達成できない、達成できないと挫折するでしょう。挫折し続けると小さくなる。意外にここが難しい。
 目的がはっきりしない限り、方法論がはっきりしない。鉄舟は目的がはっきりしている。だから柏の木を伐ってしまう。子供が餅を欲しがっていても。ここが違う。
 新聞を見ても、鉄舟は貧乏したんだなぁ、と思っているだけではだめ。なぜ貧乏したか、鉄舟は腕が立つのだからアルバイトをすればいい。近藤勇は自分の道場に人が来ないから、剣ひとつもって家庭教師に歩いた。でなければ食べられない。
 鉄舟は絶対しない。目的のレベルが違う。目的の内容をどうするかです。

 前回までのお話はペリーが来航したとき、鉄舟は18歳だった。過去日本にはいろんな国が来たのに追い返していた。ペリーはその事実を知って追い返されないような戦略で来た。そのおかげで日本はペリーを陸上にあげてしまった。
 インターネットはなかったけれど、このことは日本中に知れ渡った。情報はインターネットがあるから知れ渡るのではなく、すごくショックなものは口こみですごく早く情報が知れ渡る。
 鉄舟は18歳の若者、鉄舟もペリーが来たことによって、日本はどうなるか、どうすべきか、と玄武館の道場連中や周りの人と議論をした。
 鉄舟は井上清虎の「日本中そうなのだから仕方ない。ペリーのことについて議論しているときなのか、おまえは」という一言で鉄舟は気がついた。
 アメリカの船が来てあちこち忙しいと鉄舟は高山に手紙を書いており、その手紙が残っている。しかし鉄舟は「はっ」と気がついて剣の修行に戻り、腕が上がった。腕が上がった結果、井上清虎もかなわないほどの腕になった。玄武館ではかなう人がいないほどの腕前になった。さすがの鉄太郎も驕慢な振る舞いが出てきた。そのときに井上清虎が出てきて、何をしたかはまた後の話になるわけです。

2.童謡「赤とんぼ」の故郷「竜野」

 今月はロンドンとパリに行き、そのあとまた仕事で兵庫県の相生に行きました。山陽本線で「相生駅」の隣駅が「竜野駅」で、ここは童謡「赤とんぼ」の街として有名。竜野に下車して1泊しました。日本の旅館はいいですね。夕食は部屋に運んでくれるし、食べ終わると布団を敷いてくれる。
 お城はあるし、一番気に入ったのは、城下町の町屋に残された雛人形を無料で公開している。ちょうど行ったその日から始まったお祭りで、普通の家に入り昔からあった明治・大正・昭和のお雛さまを見られる。私は古い家に入った、屋根の瓦は天保時代、鉄舟が生まれた時代、お雛様も江戸時代だった。
 こんなお祭りが日本で行われている。タクシーに乗って欧米人は来るか聞いたが、姫路城までで竜野までは来ないと言っていた。姫路からすぐそばです。
 「赤とんぼ」を作詞した三木露風の出身地で、毎年童謡コンクールがあります。町を歩く人はみんな親切です。

3.日本のイメージ「BBC調査結果」から考える

 日本は本当にいい。日本の人気は絶好調です。世界で一番の人気。
 3月5日にロンドンに行ったときにBBC(英国放送)が新聞に発表しました。27カ国・2万7000人に世界で最も好まれている国、嫌われている国はどこか、アンケートをとった。嫌われている国は戦争をする国、戦争を仕掛けている国で、イスラエル・イラン3位が北朝鮮。
 世界に最も良い影響を与えている国の1位が日本とカナダです。カナダは日本の27倍の土地を持っている、人口は4分の1です。自然環境にあふれている。行ってみたいと思うじゃないですか。香港の人たちが、中国に返還されるときお金もちはカナダに移住した。
 27カ国のうち2カ国だけは日本のことを怪しからんと言っている。中国と韓国。中国では日本に対して良い印象を持っていない人が63%います。しかし、イスラエルもイランもアメリカ、北朝鮮、インドも悪いという人もいる。
 韓国が一番嫌いな国は北朝鮮、イスラエル・イラン、その次が日本です。
 どこの国が一番日本に良い印象を持っているか、日経新聞には載っていないが、たまたまイギリスに居たのでわかった。日本に対する好感度が一番高い国はインドネシアで84%、2位カナダ・ケニヤ74%、4位フィリピン、チリ、アメリカ、ナイジェリア、ブラジル、イギリス、ギリシャ、そういう国が日本に好感度を持っているベスト10です。

 昔は日本の評判は最悪だったと思います。60・70年前、満州に進出する、中国と戦争する。インドシナに進出する、翻って真珠湾攻撃する、世界中に戦争を仕掛けた国。評判は変わります。今の評判がいいから昔がいいとは限らない、でもそのまた昔は良かった。日露戦争で驕慢になった日本を諌めるために新渡戸稲造は『武士道』を書いた。
 評価は変わる。戦後急速に経済成長した。バブルのとき、日本が世界中に土地を買い求めに出た。レストランに行っても一番高い店に行って、真ん中に座っていた。元気がいいので、どんどんお金を使っていた。どの世界もバブルが崩壊したが、日本だけが15年くらい長引いた。
 バブルが崩壊した結果、日本も普通の国だったのかと。それまでは戦争に負けて脅威の回復をして、世界の経済を征服するんじゃないかと思われていた。フランスの女性の大統領もヨーロッパ中日本製品であふれると警戒し、車の輸入を制限、アニメーションも50%に制限した。
 普通の国に戻ったときに改めて日本という国を普通の目でみられた。日本のマンガの良さに気が付き出した。読み出したら日本という国はこんな国なのか、ドラえもん、アルプスの少女ハイジ、こういうものをつくる国か、と見る目が変わった。これは推測ですが。

 ナポレオン1世は今ヨーロッパに行くと、“活躍した人物”程度の評価。
 1790年代は、ナポレオンは、イタリアに遠征、エジプトに遠征し、ドイツを破って、モスクワに行く、と世界中に戦争を仕掛け、このせいで200万人死んだ。200万人というとたいしたことがないように思うかもしれないが、人口は今の10分の1の時代で今の時代で言うと2000万人殺したことになる。極悪非道の罪悪人。戦争をどんどん仕掛けて、モスクワで負けて、ワーテルローで負けて、ざまみろと思われていた。

 60年くらいたって、1868年~1870年ごろ、フランス人のロッシュ公使が日本に来て、フランスが徳川に味方しますから、お金出しますから、薩長軍と戦争しなさい、北海道を担保に陸軍を出しますと言った。幕府は日本に居たフランス陸軍の協力を得て、東北で戦って、フランスの将校は、函館戦争にも参加した。 そういうときに、フランスがだめになった。プロシャと戦争して負けて、フランス領土だったところが取られて、フランスはしゅんとした。フランスの国力が落ちたわけですから、フランスは脅威ではない。軍事力は勝っているときは脅威だが、負けたら脅威ではない。軍事力が弱くなるとフランスに対して好意的な見方になってくる。ナポレオンは、王政を倒すために第一弾目にやってくれた人物だったと評価が変わる。

 温泉の専門家ですから、その頃、フランスの中に温泉ブームが起きた。それまでのフランスの金持ちはドイツのバーデンバーデンとかチェコの温泉に行った。負けた結果フランス国内でナショナリズムが起きて、外国の温泉には行くな、フランス国内で探そうと温泉開発ブームが起きた。
 フランスの作家モーパッサン(『女の一生」の著者)が『モントリオール』という本で温泉が舞台の小説を書いた。この本を見ると、今のヨーロッパの温泉は科学的だが、当時は男女が知り合う場所だったというのが延々と書いてある。
 ロシアの劇作家チェーホフ(『かもめ』『桜の園』の著者)『犬を連れた奥さん』は、幕末の作品で、モスクワの上品な奥さんが犬を連れて温泉に行き、そこに居た男とできて、帰った奥さんを男が追っかけてくる話。温泉はそういうイメージだった。

 今アメリカはどういう状況かというと、経済は順調、来年の11月には大統領選挙がある。候補者は決まっていない。候補者を決めるための、パーティをやって、ヒラリーさんは一晩で3億円くらい集めた。金がないと選挙はできない。大統領の予備選挙で一億ドルを使う。選挙本番では5億ドル、日本円で600億円かかる。
 NYの一番いいホテルで、一番いいシャンパンやワイン、料理をどんどん出す。政財界に私は元気だ!私が大統領候補に決まる!という勢いを見せたい。オバマは130万ドル集めた。クリントンやオバマ、ジュリアーニはそういうことをしている。
 民主党の党員でありながら政府の中に入っていけない人がいる。共和党が負けて民主党が勝ったとする。出た大統領は、共和党の幹部を全員排して、民主党の政権をつくる。上の役人がかわる。政権に食い込もうと思ったら、来年の11月に大統領が決まってから支持してもだめ。誰が当選するかわからないときに「あなたにかけます!」と言った人が登用される。1年10ヶ月前に大統領に誰がなるか、出世しようと思ったらそれが最大の関心事。人物を見抜かないとだめ。

 『逝きし世の面影』の「面=面・表・思い・目標・目的でもある」「影=シャドウ」
 人は顔では判断できない。顔を見たら、顔の奥にある影の部分、人は考え方・影が顔に出てくる。その人の行動を見て、行動の結果をみて、その人の人間性や考え方を判断する。
 鉄舟の本を読んで、鉄舟は貧乏だったとあるが、ではなぜ貧乏だったのか。腕は立つのだから、働けばいい。働かないから、子供も栄養不足で死んでしまった。行動を見ればなぜ貧乏だったかがわかる。
 クリントンをどうみるか、オバマ、ジュリアーニ、上院議員マケイン、誰をどう考えて、今そこに徹底的に投資するか、2008年に変わる。投資具合によって政権に入れるかが決まる。政権に入らないと自分の能力が出せない。経済、国防、をやりたいという思いを持っている人は、誰が大統領に当選するかを今からかける。間違ったらおしまい。行動というのは相手の行動を見て、自分の行動を決めていく。相手の行動を見て、相手を判断する。
 鉄舟の評価は変わらない。鉄舟が変わっていないから。日本、ナポレオンの評価は時代に寄って変わったが、鉄舟の評価は変わらない。鉄舟の読み方を変えていく

4.鉄舟は人を斬らなかったという「本当の理由」

 剣は何のために学んだか、剣を磨いて、人を切るために剣道の修行をしたわけではい。目的があった。
 幕末から明治に活躍した人物で、一度もきらなかった人に木戸孝允(桂小五郎)がいる。池田屋騒動で長州の人が殺されたときも偶然か逃げる。池田屋に時間を間違えて来たのが木戸(桂小五郎)で、誰もいなくて長州屋敷に帰ったあとに池田屋騒動が起きた。そうやって生き延びた。逃げの小五郎といわれた。
 鉄舟とは殺さなかった理由が違う。鉄舟は人も殺さない、アルバイトもしない、子供が死んでも反省しない、柏の葉を餅にかえたら木を伐ってしまう。
 自分がすべきことを若いときから考えていた。15歳のときにつくった修身二十則の中の一つ「名のために学問・武芸をすべからず」名を上げ、食を得るために、学問・修行をするのではいけない、といっている。

 23歳のときに「宇宙と日本」を書いた。その中で、日本には天皇陛下がいて、ほか武士、公家、商人・・・みな同じ、みな公平と書いている。天皇を中心にする国体をつくるために不肖鉄太郎は修行すると、鉄舟は人間修行を国家レベルにおいていた。
 個人レベルではなく、国家レベルの目的のための剣と禅。目的は国家、国家を優先したときは、自分のことは顧みない。鉄舟の生き方から学ぶべきこと。

 皆さんは国家レベルに目的をおくと、明日から働くことが必要なくなってしまうから、皆さんは目的を国家レベルにしても、しないにしても、それでもお金が目的ではあまりにもさびしい。自分の持っている面影の中に入っている、顔つきではなく、自分の中にある自分の存在意義を目的にしたら良いのではないか、自分の世に生まれた意義を鉄舟から学んだ。

 BSテレビで「本と出合う」という番組に30分ほど出ましたが、取材の中で「脳力開発と鉄舟はどう関係しますか?」という質問があった。
 脳力開発の目的は戦略指向、鉄舟は戦略思考をもったから、ああいうことができたんです、と答えた。「秀逸でした」とあとでディレクターから手紙が来た。

5.山岡静山の屋敷に行く

 鉄舟と静山の出会いは、井上清虎が山岡静山先生の下に、生意気になったからと鉄舟を連れていき、静山の弟子にさせる。
 鉄舟と高橋泥舟の住んでいた場所を教えます。茗荷谷から5分で行けるところにある。今日は時間がなくなりましたが、次回は静山との出会いを話します。

以上

【事務局の感想】
 今月も鉄舟の柏の木と切った話から、鉄舟の哲学、人生の目的について大事なことを教えていただきました。つい生まれて生きている自分の存在意義を忘れてしまいがちでありますし、その点に考えがおよばないという人々が多いとおもいます。
 存在意義は何かぜひ振り返ってみたいと思います。

投稿者 staff : 2007年04月06日 13:49

コメント

「名のために学問・武芸をすべからず」を実践した鉄舟大居士。あらためて凄い人と思います。次回も楽しみです。

投稿者 慈風菴木堂 : 2007年04月06日 18:51

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