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2007年03月16日

2月例会記録(1)

■松永純一氏

「私の仕事」
(国からの研究助成をもらっている産学官連携促進事業を中心として)

 父親の生家に鉄舟からもらったピストルが伝わっている関係でこの鉄舟会に参加させてもらっています。現在の私の仕事について紹介をさせていただきます。ちょっと長い自己紹介になりますが、ご勘弁ください。

 食物の仕事をしており、国の研究助成をもらっている仕事に2つほど関わっているので、紹介します。
資料1に私の履歴をつけさせていただきました。昭和13年生まれ、先月お話に出た「国民学校」の最後で、入学が国民学校、その年に終戦だった人間です。 
       
 製薬会社に勤め、現在は、鈴与総合研究所で食品関係のことをやっております。大学などの研究会に参加しております。研究助成が産業界、学会、官=役所、が協力して早く大学の研究成果を商品化して、早く儲けて、早く税金を収めろ、という関係になっている。研究助成のテーマが発表されてから人をすぐに集めるのは大変なので、大学の先生があらかじめ研究会を立ち上げていて、それに顔を出しているので、たくさんの研究会に参加している。
 ほかにもいろいろ関係しているものがあります。


 現在私の関係している国からの研究助成をもらっている産学官連携促進事業
・都市エリア産学官連携促進事業(文部科学省)について
「心身ストレスに起因する生活習慣病の克服をめざしたフーズサイエンスビジネスの創出」
 
 産学官連携促進事業の愛称が「フーズ・サイエンスヒルズ」という呼び名。静岡県では西の浜松を中心としたフォトンバレー、東は県立のがんセンターを中心にしたファルマバレー、中部が食品でフーズ・サイエンスヒルズという愛称で呼んでいる。新規機能性食品等開発研究会、研究会で大学と契約を結ぶ運営委員をやっている。


 静岡県には、山は南アルプスと富士山、海は湾として一番深い駿河湾。農林水産物がいろいろ取れ、全国順位で一番のものはお茶とみかんが有名ですが他にも資料3に載せたようなものが取れる。富士山からの湧き水の恩恵で虹鱒の養殖もできる。この様な農産物、海産物を利用して新しい食品産業を興そうというのが、一番の狙い。

 ロゴマーク(資料4)を今年から作ったので紹介させていただきます。輪は産学官の3つの輪を表し、赤い輪は研究者の情熱、緑の輪は山の幸、青の輪は海の幸、輪を卵型にして卵をうまく孵化させて育てよう、という心積もりで、ロゴマークを作った。ロゴマークの制定委員にもなっていた。

 「心身ストレスに起因する生活習慣病の克服を目指したフーズサイエンスビジネスの創出」を研究課題にしている。鈴与総合研究所は4番目の「抗ストレス食品・化成品素材の開発および発現機構の解析とその応用製品への展開」を共同研究でやっています。

資料5
(「酸化ストレス」という言葉ありますが、抗酸化食品は抗ストレス食品であると考えられている)
  抗酸化食品に関連した試験を紹介いたします。
 ノーベル賞を受賞した小柴さんのカミオカンデで使用された光電管を作った会社が浜松ホトニクス。浜松ホトニクスではこの光電管技術を応用して微弱発光を捕まえる機械を販売しています。
 抗酸化とは、他のものより自分が先に酸化されてしまうため、他のものを酸化から守るという事です。酸化されるということは一種の燃えるということなので、ほんの少しの光がでます。その微弱発光を検出する機械で、これを買って野菜の抗酸化力を色々調べてみました。

 野菜で抗酸化力に一番強いのが「おくら」だった。「抗酸化力のある食品は体が錆付くのを防止する」と表現されるので、本当に釘のさびを防止できるかをやった試験を紹介します。

イ:対照で過酸化水素水に釘を入れたものです。
ロ・ハ:オクラの種の抗酸化力が高かったので、オクラの種を乾燥させて粉末にしたものを0.5と0.1グラムをあらかじめ入れておいて、これに過酸化水素水と釘を入れて調べた。
ホ・ヘ:オクラ種の大部分はセルロースだが、セルロースには抗酸化力はないので、陰性対象としてセルロースを0.5と0.1をおいた。
チ・リ:抗酸化力が高いとして有名なのでビタミンCの粉末を使って陽性対照とした。
オクラとビタミンCは錆が少なく、抗酸化力が目に見える形で表すことができました。

資料6
 経済産業省の研究助成で、地域新生コンソーシアム事業に応募した。母体は清水商工会議所です。静岡と清水は合併したが、商工会議所はまだ合併していない。清水は日本軽金とか日本鋼管等の重厚長大産業で潤っていたが、その産業がだめになった。これではだめだと商工会議所が中心になって、しみず新産業開発振興機構を作り、駿河湾地域新事業推進研究会を立ち上げて、陸上養殖、バイオセンサー、高輝度LED、亜臨界水処理の4つのことを研究テーマとしグループをつくった。
 この、高輝度LEDと亜臨界水処理グループが一緒になって地域新生コンソーシアム事業に応募し採択された。


・地域新生コンソーシアム事業(経済産業省)について
「高輝度LEDと亜臨界水抽出法による薬用植物生産システムの構築」
 私は、LEDを照射するほうをやっております。いちごパックを利用して紫蘇のスプラウト(芽)にLEDを照射したらどうなるかを調査しました。
 資料の上段の写真は青のLED、下段は赤と青の混合のLED、3日半LEDや蛍光灯の元で育てた後の結果は、赤が少し枯れかかっている。青は全体にアントシアニンですが、赤紫蘇の色がついている。赤と青の混合LEDを照射したものも青と同じような状態。

 蛍光灯、窓際は日光も差し込みます。双葉の周りだけにアントシアニンができている。首にもできている。ブラックライトは可視光線に近い紫外線です。あまり危険はないということになっている。他に比べると育ちが悪くてほとんどアントシアニンができない。

 ビタミンCとアントシアニンの含有量で測定した結果です。
 アントシアニンはブルーベリーで目に良いことで有名だが、ブルーベリーのアントシアニンとは構造的に違う。

資料7
 1赤、2青、3赤・青の混合、4蛍光灯、5ブラックライト、6日光(日光が入る窓際)で、光の種類によって成分が変わる事がわかった。
 紫蘇も蘇葉という名前で生薬になっている。他の薬効成分も変わる可能性がある。黄連、柴胡を中心にやっていこうと思っている。

 研究助成とは違うが、社長がお中元にホワイトアスパラをつかっていた。最近は手に入りにくくなったので、鈴与総合研究所でどうにかならないかと言われた。喜多方の農家に作ってもらって社長のお中元には問題ないようにした。

 いずれにしろ、地球の温暖化により、真水は非常に少なくなってくる。水、肥料をリサイクルする、余ったものを回収することが出来る水耕栽培に興味を持っていたので、アスパラガスを水耕栽培で育てようとやっています。

資料8
 成長促進作用があるといわれるものをアスパラガスの苗で調べた試験です。園試はスタンダード的に使われる水耕栽培の養液の処方で、窒素・燐・カリ以外にも鉄・銅・亜鉛など必要とする金属は入っている。試験を開始したときの植え込み材料込みの重さは5グラム程度で、植え込み材料が4グラム、1グラムがアスパラの重量とお考えください。
 83日間育て、特殊なアミノ酸を使ったところ、他は20・30グラム程度なのに、100グラムちかく重量が増えた。信じていいのかわからないので、再試験をやっている。統計解析ができるだけの本数でやる準備をしている。

資料9
 来年度の文部科学省、経済産業省の今年の募集研究開発助成一覧です。研究助成は、ほかの農林省などの国や県・市でもやっている。静岡県でも200件ほどやっている。
 研究をやるときは、国なり県なりに補助を得ることを考えた方が良いと思いますので参考にして下さい。

資料10・11
 新聞の切り抜きですが、科学技術に対する助成に批判を浴びている。きっかけは早稲田大学の先生が変な使い方をしたのが原因。次の資料も、第2の公共事業にするなという書き方をしている。早稲田の事件から事前の経理的統制が非常に厳しくなっている。事後のチェック、バウチャー制にしろという意見も出ている。

 しかし、実際に国からの助成をもらう研究に携わって、一番困っているのが単年度決済という事です。都市エリアは3年、地域コンソーシアムは2年間ということなのに、単年度で決済、特に消耗品で買ったものはその年度で使い切れ、といわれる。2年だったら2年の予算でやらしてもらいたい。そのほうが能率も上がる。

 このようなことに首を突っ込む理由は、自分が興味を持っている事と関係があります。


私が興味を持っていること
・禁煙
 静岡がんセンターの総長山口建先生がつくられた「タバコの害」を下敷きにして小学校4年生に以上に配っている。中学生にタバコの害を教えても遅いから小学校の生徒から教えている。
 長年タバコをすっていると肺がんは防げなくなるが、心臓とか血管とか胃腸の病気は、やめたとたんに正常に近くなるから、今更やめても遅いという人が時々いますが、そんなことはないことをご理解いただきたい。

 少子高齢化、子供が増える対策をどうするか、ということを言っている。この間の国連の気候変動に関する政府間パネルでは今世紀末までに6.4度気温が上昇するだろうといわれている。原因は人間の活動による温暖化ガスの放出によるとほぼ結論づけられている。

・地球温暖化
「宇宙船地球号は定員オーバー」
 人口80億にはまだ達していないが、もう定員オーバーだろうと私は思っております。したがって、世界の人口は減らさないとならない。

「人口減の日本を世界の手本に」
 日本は人口が減ったから世界の手本にならないとだめだろう。いろんな人の意見をきいていると増やす論調が多いから腹が立っております。それをやろうと思ったら、老人が、広い意味での生産活動をしなくてはならない。必死になって病気を予防することを考えないとならない。
 医療費は国民所得の10%になるのだろうと思います。昭和36年一年間の医療費は5400円、平成15年は24万7000円、物価は20倍にはなっていないが、いかに伸びているかがわかるだろう。病気になったらだめ、病気にならず健康に気をつける。運動と休養と食事、その食事について考えることができる情報の発信がしたいと思っております。
65歳を過ぎてこのような仕事についていられることに対して、幸福に感じております。

・アンチエイジング
  元気な老人社会の実現を目指して行っている
実験の一部
・「おくら」の釘錆防止試験
・アスパラガス成長試験
・LED照射試験
を紹介させていただきました。

 運動と休養と食事で生活習慣病を予防し元気な老人社会を創りましょう。

【事務局の感想】
  松永さんからは、「私の仕事」と題しまして、発表していただきました。このような研究をされている方が鉄舟サロンにいらっしゃるのかと思いますと、参加者の方々は、大変有能で、タレントにあふれている方がお集まりだと思います。
 仕事に加え、松永さんの関心(禁煙、環境、アンチアイジング)も発表していただいて、このテーマもこれからの人々の重大関心事だとおもいますので、今後も研究を続けていただきたいと思います。

以上

投稿者 staff : 2007年03月16日 12:34

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