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2009年12月24日

2009年12月例会ご報告 その2

山岡鉄舟研究会 例会報告
2009年12月16日(水)
「切落し」
山岡鉄舟研究会会長/山岡鉄舟研究家 山本紀久雄氏


山本会長の発表は、「切落し」と題し、剣の極意から学ぶべきことをお話しいただきました。
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今回の発表タイトル「切落し」とは、鉄舟が遺した「一刀流兵法箇条目録」の12箇条の目録のうちのひとつです。
山本会長は、そのうちの冒頭の二つについて解説し、これは人生指針であると語られました。

■一刀流兵法箇条目録
一、二之目付之事(にのめつけのこと)
二、切落之事(きりおとしのこと)
三、遠近之事(えんきんのこと)
四、横竪上下之事(よこたてじょうげのこと)
五、色付之事(いろつきのこと)
六、目心之事(もくしんのこと)
七、狐疑心之事(きつねぎしんのこと)
八松風之事(まつかぜのこと)
九、地形之事(ちけいのこと)
十、無他心通之事(むたしんつうのこと)
十一、間之事(まのこと)
十二、残心之事(ざんしんのこと)
        以上十二箇条

■二之目付之事(にのめつけのこと)
二の目付とは、敵に二(ふたつ)の目付ありと云ふ事なり。先づ敵を一体に見る中に、目の付け所二つあり、切先(きっさき)に目をつけ、拳に目を付く、是れ二つなり。故に拳うごかねばうつことかなわず、切先うごかねばうつことかなわず。是れ二目をつくる所以なり。敵にのみ目をつけ、手前を忘れてはならぬ故、己をも知り彼をも知る必要あるを以て旁々(かたがた)之を二の目付と云ふなり。

これを山本会長は『伊藤一刀斎』(廣済堂創立60周年記念出版)著者の好村兼一氏に解説を請うたそうです。
好村氏によれば、これは剣道の世界では「観見強く、剣の目弱く」ということだそうです。このことを山本会長は、全体から個を見、かつ個を見て全体を見よ、ということと解説されました。

■切落之事(きりおとしのこと)
切落(きりおとし)とは、敵の太刀を切落して然る後に勝つと云ふにはあらず。石火の位(くらい)とも、間に髪を容れずとも云ふ処なり、金石(きんせき)打合せて陰中陽を発する自然により、火を生ずるの理なり。火何れよりか生ず、間に髪を不容(いれず)の処なり。切落すとは、共に何時の間にやら敵にあたる一拍子なり。陰極って落葉を見よ、陰中に陽あつて、落つると共に何時の間にやら新萌を生じてある。切落すと共に敵にあたりて勝あるの理なり。

好村氏によれば、切落しとは相手が斬り込んできたら、間髪入れずにこちらも斬り下げることなのだそうです。そうすれば相手の剣を飛ばすだけでなく、相手に斬り込むことができるという、剣道で最も重要な極意なのだそうです。


山本会長は、このことは重要な人生訓である、と語ります。
切落しが教えてくれること。
それは、逃げない、ということ。
人生の中で壁にぶち当たったとき、そこから逃げるのではなく、真正面から自分の力で立ち向かうことだ。
剣の極意を生き方の指針として捉えていくこと、そして、もっと重要なのは、それを日常訓練していくこと、そうでなければ「切落し」は到底実現できないのです。

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鉄舟が私たちに教えてくださることは沢山あります。今回の目録のように、鉄舟が遺した文章ひとつをとっても、鉄舟の生き様、哲学が息づいています。
例会終了後の「望年会」で、参加者がこんなことをおっしゃったそうです。
「鉄舟さんがまるで我々に自分を研究しろと言っているようだ」
鉄舟の生き方を学ぶことは、時代がそれを要求しているのだと理解したいと思います。激動の世の中を生きた鉄舟のブレない生き様は、時代は変わりその内容も変われど激動の現代を生きる私たちに、確かな道標を示してくださっているように思います。そして、それを分かりやすく解説し導びいてくださる山本会長の鉄舟研究は、私たちの生き方の指針になると確信いたします。

研究は続きます。
来年の山岡鉄舟研究会も、是非ともご期待ください。

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例会終了後、忘年会ならぬ「望年会」を行い、来年に希望を託しつつ楽しいひとときを過ごしました。
ご参加くださいました皆様、ならびに本ホームページをご愛読の皆様、誠にありがとうございました。
新年は2010年1月20日(水)18:30〜東京文化会館 中会議室1です。
来年も皆様のご参加をお待ち申し上げます。

(事務局 田中達也・記)

投稿者 lefthand : 2009年12月24日 08:35

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