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2006年10月07日

9月例会記録(2)

■ 山本紀久雄氏

23歳でつくった思想体系「宇宙と人間」

8月に取材でチリに行った。真冬だから気温は零下2度。驚いたことにチリは、経済成長過去20年間6%平均で伸びている。チリ政府から2回も勲章をもらっており、チリに永住を考えている方が案内してくれた。街並みも美しく、中心街から80キロはアンデス山脈がみえてしまう素晴らしい国だった。
チリでは犬が放し飼い。いわゆる野良犬がいる。日本には放し飼いの犬がいないので珍しいと写真を撮る。チリの人には“日本には犬がいないのか?”と思われてしまう。

金子さんに代わって報告する。今月9月18日は敬老の日だった。東京高島屋では『脳を鍛えるぬりえ』がこの日の売れ筋物品だった。日経新聞にも載った影響が大きい。ぬりえは時流を極めている。医学界から、来年6月に国際ぬりえシンポジウムが開催されるから参加してくれないか、と打診があった。委員長・副委員長は大学教授、顧問に元総理の細川さん、水島裕さんなど著名な方が入っている。運営委員に金子さん、私も入っている。お金は医学グループが集めてくれるから苦労しない。

トリプトファンの研究で有名な高田教授は鉄舟も研究しており、今度お会いしたときに鉄舟のことについて聞いてくる。セロトニンについて研究されている有田先生には今度ぬりえを塗ったらどれだけセロトニンが出るか?ということを調べていただく。最近ぬりえに関わるようになり、医学界の著名な教授とお会いすることができた。現在、健康倶楽部の理事なので、桜井さんには劣りますが、健康について勉強していることをご報告する。

今度ぬりえの心理という本を出版する。『ぬりえ文化』は文章が多くて読むのが大変。書くのももちろん大変で、50冊・60冊読んで書いた。『ぬりえ文化』はぬりえに関する教科書で、あの本を読んで大学の教授や京都大学の大学院生などが金子さんの元へ話を聞きに来るようになった。1500冊印刷したのが、あと50冊でなくなる。『ぬりえ文化』は、素養のある人は読んでいるが、研究者ではない人にも読んでもらわないといけないということで、ぬりえの心理についてのエッセイを出版する。内容は、私が、3歳の子供・32歳のお母さん・ぬりえが置いてある販売台・塗られるぬりえそのもの・ぬりえを出版する出版社、になって擬人化法で書いた。子供になるのは難しい。全員が通り過ぎているけれど、3歳のときの記憶は単発で出来事を覚えているが、心情についてはわからない。3歳4歳の心情については本を読んでも推定しか書かれていない。そこで子供を観察した。『ぬりえの心理』は世界に発行するので、無国籍にしなくてはならない。ある国のスーパーで行われていたぬりえ教室で、子供を観察していたら丁度3歳の子がいて、観察していたら、はっと解ってそれで一気に書き上げた。簡単に読み終わるからぜひ読んで欲しい。12月の全国大会にはできあがっているかもしれない。

1.鉄舟人生の節目
「鉄舟の生涯の“節”ともいうべきものを考えれば、まず十七歳にして父を失ったときがその第一節、二十四歳にして尊皇攘夷党を結成したのが第二節、三十三歳にして駿府に使いをした頃からが第三節、四十五歳の大悟が第四節、しかして四十九歳で庭の草花を見て機を忘じたのが第五節完成期、はなはだ大胆な分け方だが、このように見ていいのではないかとおもう」
(大森曹玄 山岡鉄舟 春秋社)


人生には節目がある。鉄舟研究家の有名な大森曹玄さんが鉄舟の節目について以下のように述べている。
1.17歳にして父を失ったとき。
2.24歳で尊皇攘夷党を清河八郎と結成したとき。
3.33歳にして慶喜に言われて駿府へ西郷隆盛を説得に行ったとき。
4.45歳で悟ったとき。
5.49歳で庭の草花をみて、機を忘じたとき。

5について解説すると、鉄舟は結婚してすぐに色情修行に入った。男と女の関係ではない奥のものを探すための修行に入った。無数の女の方とお付き合いし、離婚の危機もたくさんあった。最後に色情修行も終わって、庭の草花をみて人間が完成した。完成したから明治時代に人気にあった人物になりえた。


1.節目を現実に遭遇した事件で捉えるか、内面思想変化で捉えるか

このように事件で人生の節目を整理する方法もある。たとえば、学校に入学した、卒業したとか。しかし、何故その学校を選んだのか、なぜその問題が起きたのか、その原因は自分の中にある心が決めたことである。その学校に決めたのは親が言ったから。では親の言うことを聞かなければと思った自分の心にその結果の根本がある。結果の前に原因である。全ての原因は内在している。
小泉さんが良い・悪いかは自分の問題だ、と考えられたら、それは最高の境地。
鉄舟は明治天皇が良くなければ私の責任だ、という境地になれた。これを解明しないとならない。


2.鉄舟思想の節目
「宇宙と人間」


この図は鉄舟が23歳のときに書いたものである。
1858年、安政の大獄で、井伊大老が監獄に入れ始めたのは9月からだった。
その4ヶ月前に鉄舟はこれを書いている。この図は発表するものではない。当時は無名の貧乏旗本であり、自分が見るだけのメモとしてこれを書いた。「宇宙」という言葉は現代でも新鮮。鉄舟は一度として世界に出たことがないのに、「宇宙」という言葉をどこから持ってきたのか?
図では宇宙の下、「地世界」を諸外国と日本国の2つに分けており、日本を4つに区分けしている。しかしその中に徳川幕府との記述がない。鉄舟は当時徳川幕府の旗本なのに、徳川幕府を超えていた。天皇の下に国民はみんな同じであるという横並びの民主主義の考えを持っていた。1858年に民主主義が入っていたのか?この思想がなければ、新しい時代が来ることがわかっていた西郷隆盛を説得することができなかった。

勝海舟が、福沢諭吉を通訳にして、咸臨丸でサンフランシスコに行ったが、鉄舟が「宇宙」と書いた2年後。

彼らはアメリカ人に「ワシントンのお子様はどうなっていますか?」と質問した。
江戸時代の将軍家は世襲制。家康の息子は2代将軍秀忠、秀忠の息子は3代将軍家光。アメリカの初代大統領は、ジョージ・ワシントン。江戸時代だと徳川家康のような人。
そんな偉い方の子孫はどうなっているか?とたずねた。
アメリカ人が「知らない」と答えたとき、咸臨丸の人は驚いた。アメリカでは大統領が4年に1回交代することも知った。

勝海舟は敏感なので、アメリカは世襲制ではないことを知り、民主主義をすぐに理解した。その後世襲制について江戸幕府で意見をしたら左遷された。

しかし、このようなことはアメリカで体験してくれば誰でもわかること。現場へいって見つけることは普通である。しかし鉄舟は外国には行ってない。庭の草を全部食べつくしたほどの貧乏だったので、外国へは行けない。どこからこの民主主義を持ってきたか。これは本にも書いてないので、究明しないといけない。

人間というのは思想・行動があって、結果がある。思想を改革すれば行動がかわる。
行動から思想を変えようと思ってはいけない。思想を鍛えないで、行動しているからうまくいかない。問題は相手や時代・環境ではなく、自分の中に内在する心の問題と気がつかないと、行動は変わらない。


3.日本政治の小泉首相から次期首相への継承という思想意味

安倍さんが小泉さんの意思を受け継いで首相になった。小泉さんは、5年前首相になったときの2001年5月の所信表明演説で3つ言った。1つめは不良債権をなくすこと。今は不良債権が片付いたから銀行もお金を貸し出す。2つ目財政構造改革。自民党が赤字国債を発行した。2006年骨太方針で、2011年にはプライマリーバランスをとり、収入と支出を合わせる。現在は収入より支出が多いので、17兆円くらい国家予算を減らさないといけない。これは法律になり、方針が計算できている。
3つめは21世紀にふさわしい競争政策を確立する。この問題は、今後やっていかなくてはならない。ライブドア、西部鉄道、有価証券、道路公団の談合、水谷建設などの事件が発生した。国は既得権をもった人を排除し、競争させたいと思っている。この3つが所信表明演説であった。

競争といっても、力が強い人が勝つ、というイメージをしてはいけない。健在な経済システムの中で、競争するシステムを作りたいと思っている。どういう競争かというと、人間が作ってきたしくみから考えないといけない。
産業資本主義の時代、お金を持つ人間が一番強かった。田舎には安い人権費で雇える労働力があり、工場を作り、製品を作り、外国に売って、産業が発達してきた。日本も戦後、20年代後半から30年は高度成長時代で田舎から大量の人が働きに来た。人件費が安いときには工場設備をつくっておけば儲かる。しかし田舎の人がいなくなると、人件費があがってくる。人件費を高くしては工場で物を作っても儲からないから、今度は中国に工場を持っていく。昔と同じやり方では儲からない。ではどうするかというと、2つしかない。1、作り方を工夫する。工夫して生産性を上げる、他社と違う方法でつくる。2、他社と違うものをつくる。ハイブリットカー、薄型テレビ、など、人の気がつかない商品をつくる。この競争には金は絡まない。他と違った商品をつくるのは人間しかいない。人間のどこから?人間の頭脳からでる。人間の頭脳競争になる。

本当にそうなるか?


4.継承される内容の必然性と、競争という意味内容

『美しい国』という安倍さんの著書を読むと安倍さんという人がわかる。お父さんは外務大臣で、英才教育を受けている。構造改革については、努力が正当に行われるためには競争がフェアに行われなければならない、と言っている。

構造改革が目指してきたのは、既得権益を持つ人が得をするのではなく、フェアな競争が行われ、それが評価される社会にすること。
日本は和の社会だから、既得権益の中に閉じ込められていた。フェアに競争が行われ、正当に評価される社会にする。本に書いたから、その通りにしないと追求される。

日本国の総理が、総理の思想が日本を決めていく。好き嫌いではなく、総理がどんな思想を持っているかが大事。総理の思想もそうだが、自分の思想も時代とあっていないと駄目。時代と会った革新的思想を持ちえたら、世の中に登場することになる。ぬりえが良い一例である。


5.脳ブームの背景の捉え方
競争社会は安倍さんに継承される。脳ブームはそれを意味している。
競争は体ではなく、一人一人の中にある能力、一兆個の脳細胞をどう使うかである。
使い方のしくみを皆さんが学習していくということ。


【事務局の感想】
今回の山本さんの鉄舟解説の目玉は、鉄舟が1858年に書いたという「宇宙と人間」図です。
勝海舟がアメリカに行き民主主義を知る2年前に、鉄舟は民主主義の考えを持っていたということです。日本に民主主義が紹介される前に、すでに鉄舟は民主主義という考えを持っていたというのです。これには驚かされ、そして鉄舟の先見性をあらためて認識いたしました。なぜ鉄舟はこの最先端の思想を持つに至ったのか。山本さんの今後の研究に期待したいと思います。

投稿者 staff : 2006年10月07日 13:03

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