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2006年06月09日

5月例会記録(1)

5月例会記録

栗原一氏 
「この10年で考えていること~出逢に感動、今を大切に生きる」

自己紹介並びに現在行っていることとして聞いていただければ有難く思う。
ここ数年、先祖から引き継いだ土地で有機栽培・無農薬栽培をしている。
野菜と出会って、作った野菜をお届けして、感動に感動を与えたという話しをする。

埼玉県の熊谷の西別府に住んでいる。熊谷というと、壇ノ浦合戦に出陣した熊谷次郎直実がいた。隣の深谷市には日本経済を支えた渋沢栄一がいた。
農業が主でその土地にあった作物を作って生活を立てているところ。
日本全国絹織物が盛んになった時代、養蚕が盛んな土地だったが、産業が変わり養蚕もなくなり今は米、小麦、野菜作りが重点。
農家の長男として生まれて、家で食べる分プラス肥料代くらいになるように野菜を作付けしている。

私は、ある人と出会ってから、皆さんとめぐり合う機会を得た。
昭和60年に仲間内の研修会があって、富士山のほうへ精神的に修行に行った。そこで体験をしたことから鉄舟会に参加し、皆様の前でお話する場に出られるようになったのではないかと解釈している。

どのように野菜をつくるかは、肌で感じたことや両親がやって見せてくれたことをそのままにやっている。作物というのは、その土地にあった作物を作っていれば問題ない。
通常は、運搬・倉庫業・引越しをやっている熊谷通運というところで働いていて、運送会社の倉庫で荷役作業をしている。一日中フォークリフトに乗って働いている。

出会いに感動して、皆様とお会いして、自分が好きでやっているのが有機栽培。
有機栽培を会社組織でやっているところもあるが、資金がないので、大きくやることは中々できない。以前は、米、小麦、養蚕、酪農もやっていて、野菜はそんなに作っていなかった。20年前くらいに酪農を止めて、野菜にした。土が肥えているのでまぁまぁの野菜が出来て、皆様に喜ばれている。
家族構成ですが、母、女房、子ども三人。長男家族に孫がおり、恵まれた生活している。何も逆らわず、自然体で生きているから、恵まれているかなとおもう。感じたら動くようにしている。頭で考えるのは嫌いだから。
畑で土を耕していると、鉄舟会を思い出す。皆さんの顔を浮かべながら、作物と対面して、土を耕耘し、汗を流している。鉄舟先生の教えに従いながら、自分にがんばろうと意識付けている。

数年前から「書」も書いている。書も単に書きたくなったから書いていて、誰に言われたわけではない。自由きままに栗原一の字として書いている。まだまだ書ける字は少ないですが。
(栗原さんのかかれた「動」「感動」「情」が展示されています)人間の原点というものは動くことから始まるのではないかと思う。だから動くことは大好き。老いも若きも動かないと始まらなくて、情や感謝を込めて行動すれば相手にも伝わって、自分の人生が楽しくなるのではないかと思う。

書も数年前に始めて、友人にどこかに出したら?といわれて、そんなときに新聞をみていたら、三重県・伊勢神宮の奉納書道展というのがあると知った。そこに一年を通じて、どんな文字を書こうかと考え、どんなことをやろうかと考え、出品したのが「動」という文字。2年目に出したのが「感謝」。私生活の中で「ありがとう」を言っていると円満に過ごせて、良い方に向いてくる。
3年目に出品したのが「情」愛情・友情、情にはいろんな情がある。真心という意味をこめて「情」という文字を書いてみた。自分が書く書は、褒められる・上手になるのではなくて、自分の気持ちに意思をつけるために書に託している。上を見たらキリがない、自分は底辺を歩んで、道端の雑草・石のごとく踏んだりけられたりしながら生きている。
自分で書に点をつけるなら、作品に申し訳ないが25~30点くらいだと思う。上を見ると文部大臣賞、総理大臣賞・伊勢神宮宮司賞、教育委員長賞とかあるが、下から3段目の賞・金賞をとった書。この書をみて何か感じたら行動に移していただければありがたい、と思う。

昨年、女房の母親を亡くして、自分の親を亡くしたときよりもがっくりきているときに、筆を持った。人間原点に返って、無になれば良いのではないかと思い「無」という文字をかいた。
宮澤賢治の「雨ニモマケズ」という有名な詩がある。自分にあった詩がある。みんなにボンクラ(詩では「デクノボウ」)と呼ばれ、「慾ハナク 決シテ瞋ラズ イツモシヅカニワラツテイル」いくらか自分に似ている詩だと思っている。そういうものに私はなりたい。

ひとつ作物を例にとってお話ししたい。春の野菜は暖かくなりかけたころ、3月のお彼岸を目途に種を蒔けばいいといわれている。長期予報やデータを取って教科書のようにやっていると、自然は怖いもので、なかなかうまくいかない。私は彼岸の中日3月20日を目途に耕して、きれいにして、大地に一粒一粒、種から育てる。次第に地温も上がって、発芽して、ポツリと芽が出たときの感動は、本当にやってみた人じゃないとわからない。それから雑草や虫との闘いが始まる。ほとんど消毒する手間や肥料をやる手間がない。やればいいものができるが、その手間がないので自然に無農薬になっている。虫も生き物なので殺さないでつまんでいる。自然の法則で、野鳥が食べてくれるから。
夏、炎天下の中で泥寄せする。人間でいうと、夏に土をかけるのは、人間とすると布団被って寝ることだと聞いている。葱は泥を嫌う。いくらか寒くなってきた10月ごろに畝を作って、白い葱ができるように泥を寄せていく。
冬の野菜小松菜・ほうれん草・白菜だとか、いろんな種を蒔いて、その年に出会った人に、食べさせてあげたいと思っている。汗をかいてつくったものを本当に気のあった人、出逢った人に食べさせてあげるというのが生きがい。
大事なものとか良いものは人にはあげたくない、と思うが、作っていると次第に食べさせてあげたいと思う。そのあげたいと思う気持ちの発端は、お袋・女房です。恩師に作った野菜を贈っていて、今は自分がそれを引き継いでいて恩師に送っている。

野菜を送ると感動して礼状をいただく。あげたくてあげて、食べてもらいたくてあげて、それで本当に感動したと、電話や礼状もらうと、感動が感動や感謝、ありがとう、動いてよかった、心をこめてつくってよかったと思う。そういう気持ちになっておれば、子どもたち・親たち、みんな見ていると思う。
孫たちも自分の姿を見ていれば、伝わってくると思う。
今を大切に生きている。自分も自然な生き方になっている。

本当は話の流れや資料を作らなければならないが、肌で感じた実話を話したいのであえて何も用意しなかった。日垣さんから話しを聞かせてくれ、と言われた。こういう席にきて、なるようになる状態になってしまった。

資料も準備も何もないので、書を持ってきた。
栗原一の字で、1月27日埼玉県熊谷市に降った初雪を溶かしてすった文字。
雨や雪を嫌う人がいるが、雨や雪が降らないと困る人がいる。自然の恵みを何かに残したくて、文字は初雪を残しておいて、溶かして使っている。
芋の葉が私の丈くらいあって、朝もやの中、朝起きて、瓶をもって芋の雫を取りにいくのが本当に楽しい。昔の人も朝露で文字を書いた人がいたらしいが、真似ではなくて、自分もやりたいと思った。
そのように文字を書いて…書くというか、自分では描く(えがく)といっているが、書道はじめて丸10年。師匠である行徳哲男の教えを受けたのが21、22年前。研修を受けていなければ、底辺を歩んでいる道端の石ころのような自分が、皆さんと出会うきっかけはなかった。鉄舟会の皆さんと出会えて自分は本当に幸せ者だと思っている。農作業していたら出会うきっかけはなかった。鉄舟会のおかげで、本当に私は楽しい人生を送っている。

野菜をあげる、ということは、お袋と女房が走り。人にあげるといっても兄弟や近所の人にあげて、だんだん輪を広げて遠くの方にもあげるようになった。今は、北は北海道・札幌、南は九州、沖縄の人たちにも食べてもらっている。作っていると本当に楽しくて、遊び心があって、疲れがなくて、ストレスってどういうものかわからない。頭で考えない。朝起きて鳥に餌をあげて、畑が心配だったら、畑に行く。鳥も20羽くらいいる。烏骨鶏(うこっけい)、アローカナ(青い卵を産む)に餌をあげて、 一日が始まり、土日を利用して畑に行っている。畑の広さは坪数にすると300坪のところで、友人が畑に来てこんなに沢山の量を家で食べるの?と聞かれて、人にあげていると教えている。どんな土か見たいと幸手から人が来て、土をみて、たまげて帰った光景もあった。
熊谷は地形が良くて、背には赤城・日光、右には妙義・浅間、前には秩父連山がある、そんな地形で農作業して、疲れたら梅の木の下や紅葉の木の下で一息ついて、無農薬栽培をしている。

世界を極めた元WBCの世界チャンピオンのガッツ石松さんに2年前、30周年記念パーティに招待されて、女房・倅夫婦と一緒に行った。奥様からいつも新鮮な野菜をありがとうございました、といわれたときも感動した。ガッツさんにも私の野菜を食べてもらっている。きりがないけれど、感動が感動を呼んで、底辺の自分でも損得考えないで野菜作っていて、本当に良かった。

今日は本当にこのような席で、諸先輩方の前で、失礼なこともあったと思いますが、この場に免じて、お許しいただければありがたいと思います。とにかく皆さん動いて、感謝して、情をこめて、ありがとうと言って動きましょう。ご列席ご一同様、また欠席の皆様も、いると思いますが、出会いに感動しております。最後になりましたけれども、もしも・・・もしも機会がありましたら今度は「花」をテーマに語りたいと思う。ご清聴ありがとうございます。(合掌)

【事務局の感想】
栗原さんの話を聞いているとレジメより大事なことがあると感じさせられます。内容が一番。それも生の体験、経験を自分の実感で話しているので、私たちに直接伝わってきます。栗原さんからいただく野菜はもちろん美味しい元気な野菜ですが、梱包の手間もいとわず、又自分の実家から送ってきたように至れり尽くせりなのです。その背景が今回わかりました。
発表にしていただきまして、感謝!多謝!

投稿者 staff : 2006年06月09日 15:17

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