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2006年04月23日

4月の例会感想

今月は古今の印刷を学びました!

鉄舟サロン4月は山本先生がお休みということで、会員の下村辰三さんと私、田中が発表することになりました。キンチョーしましたよ。
   
下村さんからは、現代の「印刷の基礎知識」についてということで、現在の印刷についての基本原理と技術について教えていただきました。そして、私からは「変体仮名について」ということで、学生時代に勉強した古典文学の中での基礎知識である変体仮名を紹介させていただきました。

まずは下村さんの印刷について。現在、印刷は主に3種類の方式を用いて行われています。凸版印刷、オフセット(平版)印刷、グラビア(凹版)印刷です。
それぞれに特長があるのですが、基本原理は皆同じです。それは、青・赤・黄・黒の4色のインクを重ね合わせて印刷するということです。
インクが4色あり、それでいろいろな色を表現できることは、コンピュータを使われていらっしゃる方には馴染みのあることだと思います。パソコン用のカラープリンタも同じ原理を利用しています。すなわち、4色(シアン・マゼンダ・イエロー・ブラック。略して「CMYK」という)を細かい点にして紙にポツポツと印刷すると、私たちの目には色がついているように見えるというわけです。不思議ですね。
これは、色彩学的にいうと、色は物質に固有の特長ではなく、光が物質を反射して目に飛び込んでくるとき、飛び込んできた色の波長を目が脳に送り、脳で処理をして初めて色がついていることを認識するからなのです。物質に色はついていないのです。人間の脳が色を創り出して脳の中で物質に色をつけているのです。難しいッスかね?
印刷物を拡大鏡で覗いてみますと、例えば人間の肌の色もCMYK4色の色の点の集まりで表現されているのです。それを遠目で見ると、肌の色にみえるんですなぁ、これが。
ちなみに、4色の中でも「黒(なぜかBではなくK)」は、理論上他の3色を均等に混ぜるとできる色ですが、そうすると印刷するとき黒は青・赤・黄の3色を使わねばならず、不経済なので黒が別に用意されているんです。印刷物の中で黒が占める割合は多いので、そうなっているそうです。


色彩は人間の心理に影響を与えることが知られていますが、その「色」をよくよく見ると4色の色の掛け合わせになっているというのは、何とも不思議です。絵の具など、本当に混ぜて作る色と、印刷のように目を騙して見える色は、人間の心理への影響は同じなのでしょうか。新たな研究テーマができてしまいました。

続いて、私の発表です。自分で感想書くのもナンですので、下村さんの印刷のお話と関連することを書きたいと思います。

現代の印刷技術は原稿の色を4色の精細な点の集まりにすることによってカラーを表現していますが、江戸時代のカラー印刷はインクの色そのものをベタ塗りする形でした。まさに版画の手法そのものです。
江戸時代のカラー印刷の代表は浮世絵でしょう。これは、各色用に彫った版画を重ね刷りすることでカラーを表現しており、原画に使われる色の数だけ版下(板木という)を彫って何回も重ね刷りするのです。これはまさに職人芸です。彫る技術もそうですが、彫った何枚もの板木に1回1回同じ紙をのせ、狂いなく重ねて刷る技術など、神業といっても過言ではないくらいの精緻さで刷られています。

浮世絵は商業印刷物でありながら、世界で認められている芸術作品でもあります。その芸術性が、日本人の精巧な印刷技術によって支えられていることを思いながら、浮世絵を観察してみてください。きっと今までとは違った視点で「ホォ〜」と唸ること請け合いですよ。

(田中達也・記)

投稿者 lefthand : 2006年04月23日 23:03

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