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2005年11月24日

11月例会記録 神道とは何だらう?

11月例会記録(1)

上米良恭臣氏 「神道とは何だらう?」
 ―現代人の退化、見えず。聞こえず。感じず。―

●米良姓、菊池姓について
米良という姓は、南北朝時代の九州の豪族、菊池武房・武重・武光と関係がある。
菊池は楠木一族と一緒になって足利勢と戦った。菊池一族が、戦国時代に衰退して逃げ込んだ場所が熊本県と宮崎県の境にある米良山で、天姓(あめせい)米良氏と名乗って生き続けた。米良村には150戸くらいの家しかなく、半猟・半林、猟をしながら植林の仕事をしていたが、獣を殺すために300丁くらいの鉄砲があって、その鉄砲を持って明治維新に参加している。その米良氏が明治維新になって、菊池一族が足利勢と戦った功績と明治維新の功績として、米良姓から菊池姓に復元をして、明治4~5年の頃菊池神社(熊本県菊池市の山頂)を創建した。その旧姓の米良を使っている。菊池さんの当主が武夫さん。武夫さんは、美濃部達吉が天皇機関説を出したときに大反対を唱えている。そういう由来を話しまして、神道について話す。

●日本の神について
日本の神様に関する考え方には、「いますがごとくつかえまつれ」という言葉があった。
私は反論して「いますがごとく」では影になるので「ごとく」ではなく、「いますから」と
提案し、神主さんと討論をしていた。
神様は、今現代に見えないだけ、感じられないだけ、聞こえないだけ。
本当に神様がいるか、神社に泊り込みで菊池神社へ行ったことがある。
背筋がぞくっとする気配を感じた。
私は日本の神様がいらっしゃると考える。ご神体は山、滝、人、雷、怖がるものを
皆神様とした。
菅原神社は天満宮として讒訴されて亡くなられた菅原道真公を祀っている。
雷を起こすなど、非常な力を持ったので、神様として祀った。怖いものが神様だった。
全てではないが、身内が祀る、としている。たとえば、その子供が祭る、とか。
それが日本の神道のながれ。

●GHQからの神道指令について
敗戦後、GHQから神道指令が出る。明治期に神道は国家の宗祀だ、と言っている。
このたびの戦争についても神道や武士道があるから、ああいう死に物狂いの特攻や
一人も逃げない戦ができたとGHQは分析し、国家と神道を切り離さなければならないと、
神道指令が出た。国家と神道を切り離したものだが、神道は宗教なのか?
という話になった。
もし宗教とするならば、国際公法上、戦勝国がその国の宗教を変えることはできない。
ところが国家の宗祀だから宗教活動・布教活動を行っていない、明確な教義や経典はないから、宗教ではない、とGHQは決めた。
神社側との討論の中で、宗教でなければ神社をすべて潰す!とGHQから暴論が出た。
宗教法人として、それを統括したのが、神社本庁で、全国の神社をひとまとめにして、
監督・指導などもやることになった。
神道が宗教か否かは関係ない。一神教だと戦争になるが、神道の神は八百万の神なので、戦争がない。そういう宗教をこえたのが神道、というのが持論。神道は日本固有の精神文化である。神社を巡っていて、感を深くする。最近みなさんがおっしゃっているクールジャパンの最高のものが神社・仏閣ではないか。

●神社を巡る旅行
つれあいと、おしめり旅行(お=温泉・し=神域・め=名水・り=料理)という名前をつけて、遊んでいる。必ず温泉に行ったら付近の神社を探索している。
いろいろ行った中でいくつかご紹介する。埼玉県の児玉郡の金鑽神社(かなさな)には
本殿がない神社がある。山がご神体なので、拝殿しかない。
長野県上田市の生島足島神社。この神社には池があり、そこに神様が通る橋である神橋(しんきょう)が掛かっている。注連縄が張ってあるので参拝客は通れない。

●日本人と神との関係
昔、"日本人はみな神主だ"と言っていた。誰でも神主になれる素質がある。神主になるのは難しいことではなく、大学に行って、神道科を卒業するか、夏期講習を経て、試験を受かれば、誰でも神主になれるが、そういう意味ではない。
神性・・・草や花に美しさを見出せる。そういう心を持っているのが日本人で、その心を持っていれば誰しも神主になれるというのが持論。
今は、日本人は皆「神孫(しんそん)」である、という風に解釈をしたいと思っている。

●日供祭と祝詞
レジメ「本義は日供祭にあり」の「日供祭」(にっくさい)とは毎日のお供えのこと。神社では必ず毎日、1人か2人の当番の神主さんにより朝御饌(あさみけ)、夕御饌(ゆうみけ)が行われる。神様にお米や水、酒、塩を、お供えして、七折半になっている祝詞を読む。朝御饌・夕御饌を毎日あげているから神様が大きな力を出されると解釈ができる。京都の上賀茂神社では観光客が夕御饌の祭に参列できる。参列し、祝詞を聞いていただくことによって朝御饌・夕御饌を理解してもらいたいと、行っており、これには非常に感心した。

レジメにあるのは朝御饌祭の祝詞で、助詞に万葉仮名を使う。
 ※左:漢字が本文、右:括弧内の平仮名が書き下し文

今日乃朝御饌仕奉良久登(きょうのあさみけつかえまつらくと)
大前尓斎回里清回里氐(おおまえに いわまり きよまわりて)
御食乎捧奉里拝美奉留状乎(みけをささげまつり おろがみまつるさまを)
平良介久安良介久聞食志氐(たいらけくやすらけくきこしめして)
今毋行先毋(いまも ゆくさきも) 
天皇命乃大御門乎(すめらみことのおおおみかどを)
常磐尓堅磐尓斎比奉里幸閉奉里給比
(ときわに かきわに いわいまつり さきはえまつりたまい)
親王等乎始米氐(みこたちをはじめて) 
氏子崇敬者等波申佐久母更奈里(うじこすうけいしゃたちは もうさくもさらなり) 
国民諸々乃上乎夜乃守(おおみたから もろもろのうえをよのまもり)
日乃守里尓護里(ひのまもりに まもり) 
幸閉給比天乃下萬乃国乃人々(さきはえたまい あめのした よろずのくにのひとびと) 
互比尓相睦毘相親志美津津(たがいに あいむつび あいしたしみつつ) 
永久平良介久(ながくたいらけく)
弥栄衣尓立栄衣志米給閉登(いやさかえに たちさかえ しめたまえと)
恐美恐美毋白須(かしこみかしこみももうす)

神社にはお祭りがあるが、それはそれとして、日供祭が、神道の基礎、本義である。


●住んでいた神社
資料うしろの3枚の神社の写真は、わたしが2歳から7歳くらいまで住んだ神社。
この神社は熊本県の人吉、十島(としま)菅原神社。社の屋根が傷まないように屋根が
2重に成っている。下の写真の脇に平たくなった部屋は神様にお供えものをつくる部屋で
8畳くらいあった。戦後、この神饌所の中に親子4人くらいで住んでいた。
十島神社のいわれは、境内に池があり、そこに島が10個あった。
一番大きい島のところに社がある。
菅原神社は学問の神様であるのと、十島菅原(としますがわら)を「通します神社」と語呂合わせし、入学試験に「通します」というご利益があると謳っている。

●3種の神器
3種の神器はご存知でしょうか。「八咫の鏡」は、天岩戸に天照大神(おまてらすおおみかみ)が隠れたときに、天岩戸の外へ出すときに、使われた鏡。岩戸の外でどんちゃん騒ぎをして、天照大神が天岩戸を少しあけて覗いたときに、八咫の鏡に姿を映した。天照大神は鏡に写った自分をみて、なんて明るくてきれいな人がいるのだろう!と驚いて戸惑い、その隙に岩戸を開けて、外に出したという故事にまつわる鏡。

改心をした須左之男命(すさのおのみこと)が川の上流で、八俣の大蛇の尾から出た天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)を天照大神大身神に奉納する。剣は後に伊勢に移り、大和武尊が東国を平定するときに使われた。大和武尊が草原で炎に囲まれ殺されそうになったときに自分の周囲の草をなぎ払い、逆に敵のほうに火が移り、事なきを得たという。ここから天叢雲剣には草薙の剣という名もある。

鏡の下にかけた八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)も三種の神器のひとつ。

鏡は、垂仁天皇の頃、同じところで扱っていては、おろそかになると倭姫に託されて、今の伊勢神宮に移し、ご神体とされた。剣は、熱田神宮に祀られた。鏡は最高水準の技術で模したもので、宮中の賢所にある。草薙の剣を精巧につくったものや勾玉も宮中にある。

●剣璽御動座(けんじごどうざ)
剣璽御動座とは、天皇のそばに必ず三種の神器があるということ。例えば安徳天皇が沈むときに三種の神器は沈んでいる。そして伊勢神宮から持ち出して同じようなものをつくっている。持っているということは、天皇であるという意味である。伝統的に剣と璽は、天皇が行幸するときに持ち歩かれたもので、皇室の御用邸(日光・田母沢御用邸など)に行くと、剣璽の間がちゃんと別室にある。戦後になって、天皇が剣璽御動座をやめられた。昭和天皇がやめたことを次の天皇が復活することは親不孝になるのでできない。天皇が生きている間に復活させなければならない、と一般庶民の署名を集めて宮内庁に送ったりした。一時廃止されていたが、昭和47・48年ごろから、復活した。

60回の式年遷宮が、伊勢神宮で初めて剣璽御動座を復活させた。
神道は王朝の雅もあります。
2006年2月に続きをやります。


【事務局の感想】
神道は雅、神道はカラフルと上米良さんがお話されました。白木と白い布のイメージをもつ私には、上米良さんのいいたいことがまだ分かりませんが、ぜひその真意をしりたいと思います。
レジメはあっても、レジメ以上の上米良さんご自身の言葉による発表に魅了されました。2月がまた待たれます。

投稿者 staff : 2005年11月24日 12:25

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